こんにちは ツナカンです。
私はふだん
適応指導教室のカウンセラー(公認心理師)として
不登校のお子さんや
子育てに悩む保護者の方
学校の先生方
の応援をしています。
今の職場の前には
虐待を経験した子どもたちの生活する場である
児童養護施設で心理士をしていました。
今回のテーマはズバリ
学校で教えてくれない,子どもが知っておくべき性の知識
です。
いきなり性の話って…
そう思うかもしれませんが
そういう感覚が世の中の普通になっているから
子どもが性被害にあったときに
良い対応がしにくくなるのです。
ディープでヘビーな話題ですが
これまで子どもに関わってきた者として
いずれ,取り上げなければならないと思っていました。
今回はようやく,ふみこんでいきます。
この記事を読んでもらえれば
こんなことがわかります。
- 学校で絶対教えない子どもに必要な性の知識
- 子どもが性的被害にあったときの対処法
- 性的被害にあうとどうなるか
- 性的被害にあいやすい傾向
- 性的加害者の傾向
読み進めるのがしんどい記事になるかもしれません
しかし,子どもの成長のために重要だと思うことを
熱を込めてお伝えしたいと思います。
これらを知っておくことで,万が一にお子さんが被害にあったときや
親御さんがお子さんの異常に気付く可能性を高めてくれるはずです。
また,先生にもぜひ知っていただきたい内容です。
【学校で教えない】子どもに伝えるべき性の知識
性教育って学校でやってるし,家でもやれというけど,何を教えていいの?
そう思う親御さんは少なくありません。
私は,虐待を経験したお子さんとの関りや
研修などから学んだことをまとめると以下の通りになります。
年齢や発達段階に応じて伝えておきたいものです。
- いつどこで、だれと、どのような性関係を持つことはあなたが決められる
- 望まない性行為は性的暴力である
- 性的暴力は年齢・性別にかかわらず起きる
- 身近な人の間でも性的暴力は起きる
- 被害にあわない,加害をしない工夫
- 「NO」…嫌な時は嫌と言っていい。自分の感覚を信じ,気持ちを抑えなくていい
- 「GO」…逃げてもいい,できるだけ人の多いところへ
- 「TELL」…加害者から「秘密だよ」「いうと大変なことになるよ」と言われても信頼できる大人に話す。信頼できる人に出会えるまで話す。
- 「つながる」…体に触れられるのは保護者であっても学童期まで。
- プライベートパーツ…口・胸・性器・お尻は親であっても見せたり触らせたり,触らせられたりしてはいけない
- 性器の医学的正式名称
こんな風に伝えたいことはたくさんあります。
他にもまだまだあります。
しかし,いきなり教え込むのではなく
生活の中で少しずつ,さりげなく伝えていくことが
子どもにとっても良いと思います。
これらを知ることで
未然に自分自身を守る力を高め
万が一被害にあったとしても
傷を深めることからも自分を守る力になります。
一番大切なことは,そもそも性は“いやらしい”ことではない
ということを伝えることです。
私自身,「性」と聞くと恥ずかしくて
どこかに罪悪感が付きまとうような
そんな感じはあります。
しかし,それは受けてきた教育の結果なのです。
そうしたこれまでの教育の結果
性的被害にあったときに
人に助けを求めにくい日本の現状があるのです。
子どもが性的被害にあったときの対処法
子どもが性的被害にあった!どうしたらいいの!?
こんな風に,子どもが万が一に性的被害にあったとき
家族は深刻なダメージを受けます。
そんな時に,身近な大人がパニックになってしまうと
子どもは自分が被害者であるにも関わらず
家族を心配させまいと我慢してしまいます。
では,どうすればよいのでしょうか。
子どもの近くにいる人が知るべきことについて
ご紹介します。
その①:誰に,何をされたかだけ聞けばいい
RIFCR™という
第一発見者は最小限のことだけを聞き
適切な機関につなげ調査・捜査面接である
司法面接(協同面接)で詳細な聴き取りを
してもらうための聞き取り方があります。
それによると
- 誰に
- 何をされたか
だけを聞き取れば十分だとされています。
むしろ,聞きすぎることによるデメリットも
あげられています。
これは,何度も聞き出されること自体がトラウマになることや
子どもの証言は何度も聞かれるうちに変わってしまう
ことがしばしばあるためです。
これらを聞き出したら,児童相談所や警察・弁護士など
専門機関や専門職に相談しましょう。
リフカーについて,詳しくはこちらのサイトをご覧ください。
教員などの専門職にはぜひ知っておいていただきたい内容です。
チャイルドファーストジャパン https://cfj.childfirst.or.jp/rifcr/
その②:安全を保障する
先にもあげたように,聞き取られること自体が
被害にあったお子さんにとっては
トラウマチックな経験です。
ですから,二度と同じような目に合わないように
安全な環境を用意してあげることです。
最初のうちはお子さんも安全を実感できずに
急性トラウマ反応(不眠,落ち着きのなさ,フラッシュバックなど)
が起きることもあります。
それでも徐々に実感できるようになれば
落ち着いてくるはずです。
しかし,そのさなかで症状が強く出て
悪夢でうなされたり,自傷が始まるようであれば
早く医療に繋げましょう。
その③:子どもの決断を急がせない
性的な被害にあうと,いろいろな判断が必要になります。
例えば
- 警察や児相への通報
- 学校への連絡
- 医療や相談機関などへの相談
- 弁護士への相談(裁判をするのか)
- 加害者との話し合い
こうした相手とのやりとりについて
被害にあったお子さんにとって
意思を確認されること自体が
かなりエネルギーを使います。
ですので,これを急がせると
大人との関係が悪化することもあります。
反応が薄い時にはそっとしておいてあげて
考える時間を与えてあげましょう。
聞くときには,よく状態を観察し,
多すぎない情報量でコンパクトに聞いてみましょう。
また保護者が先に相談しておくのが良いでしょう。
性的被害にあうとどうなるか
以下の4つの症状が現れることがあります。
- 侵入
- 過覚醒
- 回避
- 否定的な認知
嫌なことが勝手に思い出されたり
緊張が続いて眠れなくなったり
似たような場面や人を避けるようになったり
自分や他人を責めたり
そういったことが起きます。
アメリカ精神医学会の診断基準としては以下の通りになります。
- 急性ストレス障害反応
- 心的外傷後ストレス障害
これらは日本の精神科でも診断に使用されているものです。
詳細は以下の通りです。
その①:急性ストレス障害
最初に 急性ストレス障害 という病気になることがあります。
具体的には以下の通りです。
読みやすいような表現に書き換えてお伝えします。
- 通常は心的外傷後すぐに症状が出現。診断基準を3日以上,最長で1か月続くと診断されます。
- トラウマとなるような出来事の記憶が何度も,勝手に,侵入してしまう
- 見る夢がトラウマとなるような出来事や,感情とつながっている。
- トラウマとなるような出来事がまたくり返し起きているように感じ,その時と同じような意識状態で行動する
- トラウマとなるような出来事と似たような出来事や,それと似た感じすると強烈に動きが鈍くなったり,生理的な反応が起きたりする。
- 楽しい気持ちが続かない
- 周囲や自分の現実感が変わってしまった感じ
- トラウマとなるような出来事の重要な場面を思い出せない
- トラウマとなるような出来事に関する苦痛をもたらす記憶,考え,または感情を避けようとする
- トラウマとなるような出来事に関する苦痛をもたらす記憶,考え,または感情を呼び起こそうとするものを避けようとする
- 睡眠障害
- 怒りやすくなる,怒りが爆発する
- 警戒心が異常に高まる
- 集中力低下
- 過剰に驚く
その②:心的外傷後ストレス障害(PTSD)
次に 心的外傷後ストレス障害(PTSD) という病気に
なることがあります。
具体的には以下の通りです。
同じく読みやすいような表現に書き換えてお伝えします。
以下の基準で1か月以上症状が続いた場合に診断されます。
- トラウマとなるような出来事の記憶が何度も,勝手に,侵入してしまう
- 見る夢がトラウマとなるような出来事や,感情とつながっている。
- トラウマとなるような出来事がまたくり返し起きているように感じ,その時と同じような意識状態で行動する
- トラウマとなるような出来事と似たような出来事や,それと似た感じすると強烈に動きが鈍くなったり,生理的な反応が起きたりする。
- 楽しい気持ちが続かない
- 周囲や自分の現実感が変わってしまった感じ
- トラウマとなるような出来事の重要な場面を思い出せない
- 自分や他人,世界に対して過剰に否定的な考えや予想をすることが続く
- トラウマとなるような出来事の責任を,自分自身や他人への責任だと考えるようになる。
- ずっとネガティブな感情が続く
- 大事な活動にも興味関心を失う
- 他人から孤立したり,疎遠になっている感じ
- トラウマとなるような出来事の重要な場面を思い出せない
- トラウマとなるような出来事の重要な場面を思い出せない
- トラウマとなるような出来事に関する苦痛をもたらす記憶,考え,または感情を避けようとする
- トラウマとなるような出来事に関する苦痛をもたらす記憶,考え,または感情を呼び起こそうとするものを避けようとする
- 睡眠障害
- 怒りやすくなる,怒りが爆発する
- 警戒心が異常に高まる
- 集中力低下
- 過剰に驚く
- 無謀だったり,自分を傷つけてしまったりする
- 人や物に対して,言葉や体で激しい苛立ちや攻撃を表現する
性的被害の傾向
性的被害の傾向について
以下のようなことが言えます。
- 10代~20代が一番多いが,年齢は関係ない
- 虐待環境で育つと性的虐待にあいやすくなる
- 男子も被害にあう
その①:年齢・性差
警察庁の統計では以下のようになっています。
これを見ると10代から20代が最多ではありますが
この年代は,まだ保護者が助けを出してくれる年代です。
こうしたことが警察への通報に繋がっている可能性があります。
もしかすると
こんな年齢になっても被害にあうなんて
と訴えるのを我慢している人がいる可能性もあります。
内閣府の調査によると以下のようになっています。
警察庁と同様の傾向が見えますが
こちらはあくまでも調査ということで
調査に応じていない可能性もありますので
余計に数は少なくなります。
続いてこちらの警視庁のデータをご覧ください。
強制性交にも,強制わいせつの
どちらも男性の被害者がいるのです。
男なのに性的被害にあうなんて…
こんな風に「男なのに…」と日本は文化的に
男性は強くあるべきだと思われていますから
被害にあったとしても
女性に負けないくらい隠しておきたいはずです。
その②:心理的な要因
複雑性トラウマという概念があります。
先にあげたような心的外傷後ストレス障害の他に
もっと人格に深く浸透してしまったトラウマによって
被害にあいやすい相手や環境に身を置いてしまう傾向が
身についてしまうのです。
これは本人自身の力では
コントロールすることはできません。
もっとも支援が難しい状態になります。
その③:被害にあってしまったら
もしも,被害にあった場合には以下のような専門機関に相談することをお勧めします。
ワンストップセンター SACHICO https://sachicoosaka.wixsite.com/sachico/soudan2
法テラス https://www.houterasu.or.jp/
性的加害者の傾向
加害者との関係では
以下のような特徴が挙げられます。
- 知り合い
- 家族
- 学校
警視庁の結果は以下の通りです。
強制性交は面識のある人が最も多く
強制わいせつでは二番目に多いというデータです。
一方,総務省の調査結果は以下の通りです。
家族が多いという結果になっています。
警察のデータは被害を訴えた数であり
総務省のデータは調査です。
つまり,
警察には家族からの被害は訴えられないが
匿名の調査であれば家族からの被害を報告しやすい
だから,データでは顔見知りからの被害が一番多くなる
また,学校関係者からの
性被害があることも見逃せないことです。
性的被害は,被害にあっても
言い出すにはとても勇気のいることです。
こうして数字に出ているのは
ごくごく少数,氷山の一角である
と考えるべきでしょう。
加えてデータに表れにくいのが
- 母の再婚相手の後父とか連れ子
- 異性の兄弟
など,身近な家族からの
性被害があることも注意しておきたいところです。
念のため誤解のないように言っておくと
ほとんどの近しい家族は
血がつながっていても
血がつながっていなくても
性的加害はしません。
まとめ
以上,学校では絶対教えてくれない性のこと
について解説しました。
私もこれまでの経験の中で
子どもの性被害については
記事にはできないような
シビアな場面に何度か立ち会ってきました。
そのたびに被害にあった子の思いや
自分の限界を突き付けられるような
そんな思いを経験してきました。
もし,この記事を読んだ方の中に
性的被害で悩んでいる子,その保護者の方がいたら
少しでもお役に立てば幸いです。
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