こんにちは ヒロです。
ふだんは公認心理師として
子育てに悩む親御さんや
学校の先生の応援をしています。
お子さんのことで
落ち着きがない
集中力が続かない
など学校やご家庭で気になったことはありませんか?
もしかしたら、それはADHD(注意欠如・多動症)という発達特性かもしれません。
今回は、ADHDのお子様の特徴と
周りの大人ができるサポートについて
心理学の視点からわかりやすく解説します。
1.ADHDの特徴
ADHDのお子様には、主に3つの特徴が見られます。
- 不注意(注意の持続の困難):人の話を最後まで聞けない、物事を順序立てて行うのが苦手。
- 多動性:じっとしていなければならない場面で動き回ってしまう、手足をそわそわ動かす、じっとしているのが難しい。
- 衝動性:人の言葉が終わる前に話し出してしまう、大人が指示を出す前に動いてしまう、順番を待つのが苦手。
これらの特徴は セルフ・コントロール・スキル
つまり自分自身をコントロールするスキルの発達が
遅れていることが根本的な原因と考えられています。
具体的には、
- 注意や関心が他の刺激にそれやすく、また、注意を戻すのに時間がかかる。
- 衝動的に行動しやすく、周りの様々な刺激にすぐに反応してしまうため、自分の行動をうまくコントロールできない。
そのため、
- 指示やルールに従うこと
- 言葉(声に出す言葉や心の中で考える言葉)を使って自分の行動を調整すること
- 感情的な問題に対処すること
などが苦手な傾向があります。
しかし、行動のパターン自体はたくさん持っていることが多いのです。
大切なのは、持っている行動パターンを
適切な場面で使えるようにサポートすることです。
2.先行刺激と後発事象の利用
ADHDのお子様の支援では
「先行刺激」と「後発事象」という考え方が重要になります。
先行刺激:行動が起こる前に与える刺激 (例えば、課題の出し方など)
後発事象:行動の後に起こる出来事 (例えば、褒める、注意するなど)
これらの組み合わせと、
強化(褒める)や弱化(注意する)などの後続刺激
を効果的に使うことで
お子様の行動を良い方向に導くことを目指します。
目標は、お子様がすでに持っている社会的なスキルを安定させ
周りの環境に適応できるようにすること
そして問題行動を減らすことです。
【先行刺激の活用例】
-
- 課題のヒントを増やす。
- 課題以外の刺激を減らす(周りの物を片付けるなど)。
- 課題の内容に合わせて紙の色を変える。
- タイマーを使って制限時間を明確に示す。
- ルールを文章にして分かりやすく示す。
- 指示したことをお子様に復唱させる。
- 「AをしたらBをする」というルール(行動随伴性)を2、3個決め、お子様と一緒に復唱しながら実行する。
【後続刺激の活用例】
- 良い行動をした時には褒める。
- 良くない行動をした時には軽く注意する程度にする(例えば、ちらっと見るだけなど)。
- ご褒美として、シールやポイント(トークン)を使うのも効果的です。
3.支援の結果
これらの方法を用いたプログラムでは
- 注意や多動の行動が減るだけでなく、勉強の成績も向上した。これは、良くない行動が減ることで、良い行動をする機会が増えるためと考えられます。
- お子様自身が「する」と口にしたこと(外言)と実際に行った行動が一致するようにフィードバックを与えることで、多動性や注意の持続をコントロールできるようになるという報告もあります。
- 短期間の社会性スキルトレーニングでも、お子様の社会性が向上し、問題行動が減る効果が確認されています。
本格的なプログラムを行っている場所はまだあまりありませんが
それでも家庭の中で取り入れられる部分はあるのではないでしょうか。
4.環境への支援
お子様がこれらの方法で学んだことを活かすためには
家庭や学校などの集団生活の中で
ご褒美システム(トークンシステム)などを含めた
明確なルールを導入することが大切です。
これにより、お子様と親御さん、先生、友達との良い関係が生まれます。
【家庭での支援】
お子様が親の指示を聞きやすくすることや
自分で自分をコントロールできるようになることを目標に
親の良いかかわり方をトレーニングする
ペアレントトレーニング がおススメです。
ペアレントトレーニングの多くが
発達に偏りのあるお子さんの子育てに対応しており
地域の子育て支援機関でも行われていることが少なくありません。
個別のカウンセリングも悪くはないのですが
親御さんの子育てスキルを上げる上では
あまり効率は良くないと思います。
【学校での支援】
- 環境整備が非常に重要です。
- 学校全体でルールを管理することと、勉強のサポートをすることが、認知行動的な方法よりも効果があるという報告があります。
- 教室では、集中力の維持、落ち着いた行動、学業成績の向上、問題行動の予防などを目標とします。
まとめ
今回はADHD(疑い)のお子さんのかかわりについて解説しました。
ADHDのお子さんの多動性の背景には注意力がまとまりにくいという
発達上の偏りなどもあります。
マインドフルネスには、注意集中訓練としての有用性が認められており
これもご家庭でトレーニングすることができます。
参考までに以下の本をご紹介しておきます。
集中しやすい環境を整えた上で
どの行動がよくて、どの行動が良くないのかを伝えておきます。
良くない行動が出たときには危険がなければ無視する。
その上で、良い行動ができたときにはとにかく速くほめること。
また良い行動を自覚してもらうためにも
本人に「~のときには~をする」と宣言してもらうのも
良くない行動を減らすための予防的な効果があります。
病院でお薬を飲む以外にも、親や先生ができる方法があります。
この記事が、ADHDのお子様とそのご家族のサポートに少しでもお役に立てれば幸いです。
参考文献:山本・澁谷(2009)エビデンスにもとついた発達障害支援応用行動分析学の貢献,行動分析学研究 第23巻 第1号
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