こんにちは ツナカン です。
公認心理師として
子育てに悩む保護者の方や
不登校のお子さんの
支援をしています。
適応指導教室についていくつかの記事を見ると
保護者目線での体験談が多くみられます。
blogを書くのは大人ですからそれは当然です。
では,お子さん自身の声はどうなのか
それを加えたら,適応指導教室に通うか迷っている
お子さん自身が考えるきっかけになるのではないか
そんな風に思うのです。
そこで,今回は
私が聞いた
子どもたちの目線からの適応指導教室の体験談
をお伝えします。
この記事を読んでいただければ
こんなことがわかります。
1.子どもたちに聞いた適応指導教室体験談
2.子どもにとって適応指導教室のいいところ
3.子どもにとって適応指導教室の悪いところ
4.適応指導教室について注意したい点
5.適応指導教室から高校に行った子の言葉
なお,今回の記事を書くにあたっては
全て,お子さんの許可をもらい
個人が特定されないよう,学年・性別なども非公開の上
本質を失わない程度に,あえて私の意見や表現を加えています。
適応指導教室はどんなところか子どもたちに聞いてみた
適応指導教室はどんなところか
子どもたちからはこんな意見が出ていました。
- 個性的な人が多い
- 「ダイバーシティ」
- “行ったら終わり”の場所だと思っていた
- 普通の人が行く場所ではないと思っていた
その①:多様性について
子どもたちは
個性がそれぞれ強い
そんな風に話していました。
それゆえに,学校という環境で生活するには
苦労も多いのかもしれません。
一方で,適応指導教室が
個性を表現しやすい場所
になっているのだとも思います。
この後にも書きますが
この環境の差が良くも悪くも
子どもたちに影響を及ぼすのです。
その②:暗いイメージ
子どもたちからは
適応指導教室はしっていたけど
“行ったら終わり”の場所だと思っていた。
普通の人が行くべき場所ではないと思っていた。
など暗いイメージを持っていたことがわかりました。
親は,必死になって適応指導教室に通わせようとしますが
子どもたちがこのようなイメージを持っていれば
当然行くのを渋るでしょう。
そもそも不登校というイメージ自体が
陰鬱なイメージがあるものですから
普通であるはずの自分が普通でなくなるような
そんな怖さがあるのかもしれません。
この暗いイメージを払拭するのが最初の関門になりそうです。
そのためにも私の記事がお役に立てば幸いです。
子どもにとって適応指導教室の良いところ
適応指導教室の良いところはすぐに出してくれました。
- 楽
- ハードルが低い
- 自由
- マンツーマン
- 学習面では評価される
- 出席日数がカウントされる
- 行事がある
- ほかの中学校のことがわかる
- 先生がすごい
- 学校に行きやすくなる
など,すぐにあげてくれました。
残念ながら
カウンセラーがすごい
という意見はありませんでした(笑)
その① 心理的なハードルの低さ
やはり子どもたちにとっては通ってみれば
良さがわかるのが適応指導教室なのでしょう。
楽で,ハードルが低く,自由である
そんなイメージを持っているようです。
その② その子に合わせた学習環境
適応指導教室は,たいてい
それぞれのレベルに合わせた学習支援を行うので
学力が上がる子も少なくありません。
特に,小集団やマンツーマンでの対応は
子どもの個性に合わせやすいため
それは子どもたちにとってもメリットになっているようです。
その③ 学校の評価について
私の勤務先では,
最初の段階からことあるごとに
学校との連携のことであったり
出席日数の取り扱いなど
子どもたちにもわかるように説明しています。
これは子どもたち自身の人生ですので
最低限知っておくべきことだと思います。
ですので,出席日数も要録上のみの出席だということは
ほとんどの子は理解しています。
その一方で,学校が学業の伸びを評価してくれていることも
理解しているのだと思います。
その④ 他校の子との交流
ほとんどの適応指導教室で行事が定期的にあります。
たいていは月に1~2回程度あります。
もちろん,学校のような行事を組むのは難しく
小規模行事や,調理実習などが増えてしまいます。
そんな中で,他校の様子がわかったり
在籍校の子とはちがう関係が作れたりします。
職員としては,お子さんが学校に戻れるようになることも
支援方針の一つであるのですが
適応指導教室の中でできた人間関係が消える
ということでもありますので,一抹の寂しさもあります。
その⑤ 職員について
以前にも記事にしましたが
適応指導教室に通ってくるお子さんの中には
職員にあこがれを持つ子もいます。
職員にはそういった理想化の対象としての役割もあります。
心理職は経歴などを見られて
一般求人から採用されることが多いのですが
教育相談員については
見込まれて縁故で採用されることが多いようです。
縁故というと良いイメージがない人もいますが
紹介するからには責任もある分
能力を見込まれているのだと理解しています。
職員の採用についてはその自治体の考え方や
もろもろの都合に左右されるところがあり
必ずしも専門性が高い職員がそろわないところもあります。
その⑥ 学校に行きやすくなる
家に引きこもっているよりは
適応指導教室にくる方が学校に近づきます。
というのも,職員が学習支援をしたり
心理的な支援を行えるからです。
学校に行かなきゃいけないけど
行きたくない…
そんなお子さんには誰かの力を借りるのが良いでしょうし
専門性を持っていればなお良いはずです。
適応指導教室はそんな対応が期待できる場所なのでしょう。
子どもにとって適応指導教室の悪いところ
お子さんたちが教えてくれた
適応指導教室の悪いところは以下のようなものです。
- 適応指導教室だけだと進学先が限られる
- 成績評価は低い
- 教えてもらえる教科に偏りがある
- 開いていない曜日がある
- 家にいるより良いが慣れると学校に行きにくくなる
- 学校じゃないだけに不安
- 陰気な感じがある
- 環境が行き届いていない点がある
- お昼がお弁当になる
その① 進路へのハンデ
適応指導教室は部分的な支援ですし
スタッフも5教科全てを支援することはできません。
例えば私などは教員経験はありませんので
教えるのは完全に自己流です。
また理科,技術・家庭,美術,音楽のように
教えるための専門性を持つ職員や機材などを
完全にそろえていることはほとんどないでしょう。
次に,週に5日開所している自治体もあるのですが
週に4日しか開所していない自治体も少なくありません。
適応指導教室にしか通えないお子さんにとっては
残りの一日を休まねばならず
必然的に年間30日以上の休みとなり
その結果,書類上 “不登校” であり続けるのです。
さらに枠がゆるい分,学習時間も減ってしまいます。
これらのことから,適応指導教室に通っているだけでは
学校のお子さんとの差は黙っていてもどんどん開いていきます。
家に引きこもっているよりはよいのですが
学力的にも,成績評価的にも必然的に下がります。
これがゆくゆくは高校受験のしわ寄せになるのです。
公立高校では配慮をすることになっていますが
私立高校ではまだまだハンデになっているのが実情です。
その② 慣れることに対する葛藤
適応指導教室は慣れると居心地が良い場所です。
すると次にお子さんたちが感じるのは
ここは居心地がいいけど,これでいいんだろうか…
多くの子がそう話します。
私は利用が始まる最初の段階で
メリットとデメリットを説明します。
そうすることで,お子さんが早めに自分の将来を
考えられるようにするためです。
安定してきたお子さんたちは
居心地が良いだけではいけないような感覚に
気づき始めるのです。
そうなったときが,何らかのアクションを起こすよう
応援するステップだと思います。
私は大きくなくても良いので
少しでも自分が良いと思える行動を提案したり
一緒に考えたりするようにしています。
その③ 環境について
適応指導教室がある場所はさまざまです。
学校の跡地利用は増えていますが
全く関係のない建物の再利用であることだってあります。
現在,私が勤務する適応指導教室は
学校の再利用で,最近きれいにリフォームされ
適応指導教室に適した恵まれた環境になりました。
以前は,廊下はとても薄暗く
雑音も多く,夏場は暑く,冬は寒い
お世辞にも雰囲気の良い環境とは言いにくいものでした。
こんなことが適応指導教室に
“行ったらおしまい”と思わせた原因かもしれません。
また自治体によっては給食があるところもありますが
まだまだ弁当持参のところもあります。
弁当はその家庭の様子が垣間見えますし準備も大変です。
お子さんの中には自力で用意する子もいますが
いずれにせよ,負担は大きいのです。
適応指導教室で注意したい点
ここまで読んでいただいたところで
適応指導教室にはたくさんの
メリットとデメリットがあることがわかると思います。
私のような職員や,保護者の声以上に
生徒の生の声はインパクトが大きいと思います。
ここで特に注意していただきたい点を
まとめて念押ししておきたいと思います。
- デメリットはある
- 職員の人数や質は自治体によって異なる
- 適応指導教室の環境は自治体によって異なる
- 出席になるのは要録上だけ
その① デメリットはある
学校にデメリットがあるように適応指導教室にもあります。
学校は子どもの成長に必要だと考えられるものが
パッケージになっているのです。
コンビニの幕の内弁当のようなものです。
一方,適応指導教室はその点では不足することが多々あります。
例えば,先に挙げた給食や,各種の健康診断
体育の授業や性教育など
生きていくために必要なことも
十分に行えないことがあるのです。
詳細は下記リンク記事から
適応指導教室に通うことの5つのメリットと4つのデメリット
その② 職員の配置やプログラムはそれぞれちがう
くりかえしになりますが,大事なことなのでお伝えします。
職員の配置や職種は自治体によって異なります。
ネットで見たのとちがう
ということはありえます。
例えば,必ずしも心理職がいるとは限らないですし
職員の人数や,プログラムも異なります。
体制や内容に納得がいかない場合
他の適応指導教室を選択することも
あるようですが,有料であったり
受け入れを断られることもあります。
お住いの自治体の適応指導教室が気に入らなければ
有料で民間のフリースクールに通うことが多いようです。
詳細は下記リンクへ
【不登校】不登校の子どもの支援機関「適応指導教室」はこんなところ
③ 出席日数になるのは要録上だけ
ネット情報でもっとも心配なのは
適応指導教室なら出席扱いになる
というものです。
出席になるのは,あくまでも要録上の出席だけです。
出席簿はあくまでも学校にいかねばカウントされないので
何日適応指導教室に通っていても
学校に行かなければ出席簿は0のままです。
成績票で出席は「0」のままですし
小学生のうちはまだしも,中学生になって
高校受験をするときには,これがハンデになります。
詳細は下記リンクへ
【朗報】小中学校の不登校の出席の取り扱いについて
適応指導教室から高校に行った子の話
最後に適応指導教室から高校に合格した子から
適応指導教室についての感想を聞きました。
このお子さんは学校を巡って長年苦しみ
その中で適応指導教室にたどり着きました。
色々な葛藤をくぐりぬけてとても努力したお子さんでした。
適応指導教室では自分がやりたいことに
職員が合わせてくれた。
勉強も,不足している学年に対応してくれた。
ここで過ごした時間はとても大事。
適応指導教室は,良い場所だった。
自分の不登校の経験や
適応指導教室で経験したこと
をこれから広めていきたい。
こちらのお子さんとは
悲しいとき
楽しいとき
新しい挑戦をするとき
ターニングポイントになる時には
できるだけ一緒にいるように努めました。
それだけに,こういう言葉は
支援者として,ひときわ喜ばしいものです。
まとめ
今回は
子どもたちから聞いた適応指導教室の経験談
を紹介しました。
私が関わるお子さんたちは
デメリットを自覚しつつも
適応指導教室に良いイメージを持ってくれているようでした。
もちろん,すべてのお子さんがそうではありません。
適応指導教室が合わずに来なくなった子もいます。
そんなお子さんから話を聞けたら
もっとちがう意見もでるでしょう。
いずれにしても,一度お子さん自身が
体験してもらうことが必要でしょうし
適応指導教室と相談してみると良いでしょう。
この記事が,適応指導教室の利用について
迷っている親御さんや,お子さんの
お役に立てば幸いです。
ご意見やご質問はここからどうぞ。
お返事には時間がかかる場合がありますが,遠慮なくどうぞ。
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