【遠い…】学校でカウンセリングがレアな2つの理由

不登校支援

こんにちは ツナカンです。

ふだんは子育て支援の分野で
カウンセラーとして働いています。

わたしは駆け出しの頃、スクールカウンセラー(以下SC)として
働いていた時期がありました。

今もSCとはときどき連携を組むことがあります。

SCの制度が始まったばかりの頃は
学校の先生方からは
警戒と尊重と珍しい視線を受けていたと思いますが
今となっては定着してきましたね。

しかし…

保護者からは


カウンセリング受けたくても受けられない

 

 

先生からは


相談につなげたくてもSCになかなか会えない

 

という声を聞きます。

 

それはなぜなのでしょうか。

 

少し過去にさかのぼって
SCの事情について解説します。

 

この記事は

これからSCになりたい

SCについてもっと知りたい

そんな方々のお役に立つでしょう。

 

 

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スクールカウンセラー制度の誕生と発展

 

スクールカウンセラー制度の歴史は1980年代後半にさかのぼります。

当時、いじめ問題による児童生徒の自殺が深刻な社会問題となっていました。

 

しかし、SCの存在は一般的に知られていませんでした。

 

また当時はカウンセラーの資格化に対して

医師会からも強い反発があったと言われています。

アメリカでは心理職は医者と同等の格式があり

医師会は自分たちにならぶ権威が生まれることを

危惧したのではないかともいわれています。

 

このようなことから

政治家の動きも鈍かったのが実情でした。

そのため、いじめ問題への緊急対策として

  • 通学区の一部規制緩和
  • 教員の体罰禁止
  • 養護教諭の配置

などが行われましたが根本的な解決には至りませんでした。

 

その後、1994年に

「鹿川君いじめ訴訟」 や  「大河内清輝君事件」

が発生し、世論は学校への不信感を強めていきます。

この事態を受けて1995年度の予算要求に

「いじめ対策費」が追加され

SC派遣事業が大幅に拡充されることとなりました。

 

これにより臨床心理士資格化に反対していた勢力も

厳しい世論の前に声を上げることができなくなったのです。

その後、20年あまり…

今ではスクールカウンセラー制度は

日本に定着したといえるでしょう。

 

いじめ問題への対応から始まり

外部の専門家を学校現場に導入するという

画期的な取りくみは

学校教育の現場に大きな変化をもたらしました。

 

スクールカウンセラーの勤務形態と課題

一方で、SCの勤務形態には課題もあります。

 

 

SCだけでは食べていけない

 

SCの多くは非常勤で、週4時間程度の勤務です。

年間給与は240万円程度

で、ここから諸々の税金がとられる上に

諸手当等はほぼありません。

華々しいイメージとは大きく異なり

必ずしも恵まれた環境とは言えません。

注)日本人平均年収は461万円

 

相談の時間がない

 

生徒や保護者、教師からは

「スクールカウンセラーとの面接の時間が足りない」

 


「連携がなかなか取れない!」

という声も聞かれます。

 

SC問題の背景にあるもの

 

こうした問題の背景には

  • 外部性
  • より多くの人数を確保する

という二つの理由があったのです。

SCが学校の外の人であることで、しがらみから距離をとることができます。

先生から見えないことが見えたり

言いにくいことが言えたり

するメリットがあります。

これを「外部性」と呼びます。

この外部性が専門性として評価された一方で

当時の社会背景から、できるだけ多くの人数を、できるだけ多くの学校に

配置することが重要視されたことがあります。

つまり、非常勤であることが、専門性を生かす上で必要とされたのです。

 

また、政治家からは国民の支持を得ることが必要ですので

学校現場の教育相談活動の充実を訴えるうえで

スクールカウンセラーの配置状況は

数値化できるというメリットもあったのです。

文部科学省も、学校教育相談体制の充実の指標を

SCの配置拡充に求めたのです。

 

一方で、臨床心理士認定協会にとっても

SC制度の導入は職業的発展と

学校臨床心理学という新しい学問分野を開くことになり

多額とは言えないまでも雇用創出の機会となりました。

 

まとめ

SC制度はいじめ問題への対応から始まり

外部の専門家を学校現場に導入するという画期的な取り組みでした。

 

しかし非常勤勤務や学校との連携などの課題は依然として存在しています。

これは各SCの努力だけでは簡単に改善できない課題だと思います。

 

週4時間程度の非常勤勤務では、支援が限られるのが実情です。

専門性を発揮しつつ、学校現場との連携を深めていくためには

勤務形態の見なおしが不可欠だと思います。

 

不登校の子を持つ親の方々には、SCとの連携がとても重要です。

 

しかし、現状ではSCの面接時間が足りないなどの課題があり

支援のカベに突き当たってしまうのが実情です。

 

今後、SCの勤務形態の改善により

不登校の子どもたちへの支援がさらに充実していくことを

お祈りしたいと思います。

 

【参考】
-法政大学 – スクールカウンセラーの歴史 (https://www.hosei.ac.jp/application/files/8917/1150/8406/4Vol.22.pdf)
-名古屋大学学術機関リポジトリ – 日本におけるスクールソーシャルワークの誕生と展開 宮之原 弘 (https://nagoya.repo.nii.ac.jp/record/17302/files/k10383_thesis.pdf)
-文部科学省 – 令和3年度 スクールカウンセラー等活用事業 実践活動事例集 (https://www.mext.go.jp/content/20221108-mxt_jidou02-000025789_1.pdf)
– nii.ac.jp – スクールカウンセラーのあり方をめぐる歴史的体験 – 三重大学
– 近藤(2010)スクールカウンセラー事業の展望と課題 -政策形成過程分析からの考察-, 教育行財政研究 第37号

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